病理医ぱそ太郎の病理と日常

温泉好きのふつーの若手病理医、ぱそ太郎が病理、医療などについて日々考えることを綴ります。有益な情報を発信できればと思います。ぱそ太郎Lab.

病理診断と病理学的検査

病理診断と病理学的検査

病理診断について話をする時に避けて通れないのは、病理診断と病理検査についてです。

病理診断は、病理医が保険医療機関で行うもので、病理検査は、保険医療機関ではない登録衛生検査所(いわゆる検査センターなどと言われる)で行われるものです。登録衛生検査所とは、臨床検査技師等に関する規定された施設であり、医師の指導監督のもとで、検体検査、病理学的検査を実施する営利あるいは非営利の団体で、大抵は営利企業により運営されています。読者の医師の方はたいてい、名前を聞いたことがあるような会社です。

(病理部門は子会社化していることもあります)

 ちなみに、登録とは、都道府県知事等に登録するという意味です。登録は保健所に申請が必要です。 

診断とは?

そもそも「診断」とは患者さんの病気がなんの病気かを判断することですので、当然医行為(医師でなければできない行為)です。

普通に内科に受診したとき、何の病気か判断され、お薬を出される、これのような医者としての基本的な診療の中には診断の要素が含まれています。 

病理の場合は?

病理診断も同様で、病変を顕微鏡で観察し、何の病気かを判断する。それは、上の例と同じで、医行為であることは明らかであるはずです。

しかし、平成元年に当時の厚生省から、病理診断は医行為であるということを肯定する疑義照会回答が出されるまで、医行為かどうか不明確で、検査の一部とも捉えられていました。そしてその後も、平成20年に医療法で病理診断科が標榜科として規定され、診療報酬点数表で第3部検査にあった病理学的検査が第13部に移り名称も病理診断に変更されるまでは、診断としての地位が十分確立されていたとはいえなかったといえるようです。 

病理学的検査とは?

日本の多くの病院や診療所には、病理医が勤務しておらず、また、標本作製を行う臨床検査技師もいません。病理検査室がある医療機関は少数です。そのような医療機関は、検体を登録衛生検査所に検査を委託します。病理に限らず例えば開業医さんを例に上げると、検査室を院内には持っていませんので、血液検査など、大抵の検体検査は院内では困難ですので、血液検査を依頼するために、登録衛生検査所とのお付き合いがあります。登録衛生検査所は、血液検査などを受託するのと同じように、病理学的検査も受託しています。そこで、大抵は契約している登録衛生検査所に他の検査と同じように依頼することが多いようです。すると、ホルマリンボトルに入れて提出した検体は、病理検査結果報告書として帰ってきます。また、病院でも院内ですべての検査を完結することは困難ですので、一部の検査を登録衛生検査所に委託することは普通で、病理標本の作成が院内で困難な病院では、登録衛生検査所への検査の委託が行われます。 

現状でも

病理診断が医行為として認められた、今でも、病理診断と病理学的検査は並列して存在しており、病理医が実際に勤務し、院内で診断をしている病院では、病理診断が行われ、病理診断報告書が発行されていますが、病理医が勤務しておらず、登録衛生検査所に検体を委託する場合は、病理学的検査が行われています。病理学的検査はあくまでも、検体検査の一部で、提出された検体の標本作成を受託し、その判断についての助言が記載された病理組織検査報告書として返却され(あたかも病理診断かのように)、依頼医の臨床医がそれを判断し、病理判断料をとるという、あくまでも病理学的検査の場合、臨床医が判断しているという建前になります。

しかし、もちろん、実際に臨床医が判断していることは稀と思われ、病理組織検査報告書の内容をそのまま判断しているというケースが多いと思います。

たいていの病理組織検査報告書には、「診断」という項目があり、ここに病名が書かれているのが現状です。

読み手の臨床の先生は、このあたりのことは意識されていないことが多いと思います。

病理医の中でも、あまりこういったことに関心がない人もいるのが現実です。

 

この問題、次のエントリに続きます。

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病理開業には、病理診断と病理学的検査の問題が絡んできます。

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