病理医ぱそ太郎の病理と日常

温泉好きのふつーの若手病理医、ぱそ太郎が病理、医療などについて日々考えることを綴ります。有益な情報を発信できればと思います。ぱそ太郎Lab.

連携病理診断の保険診療上のインセンティブと課題

保険診療上のインセンティブ

病理学的検査から病理診断に移行した場合、保険診療上のインセンティブも設定されています。

保険医療機関間連携による連携病理診断を病理診断科診療所で行う場合は、委託元の医療機関は病理判断料(150点)ではなく、病理診断料(450点)を算定できます。また、受託先の病理判断料診療所が常勤医2人以上の場合は、病理診断管理加算1(120点)が加算されます。これらの保険点数はあくまでも委託元の保険医療機関で算定され、この委託先で算定した病理診断料や管理加算を受託先にいくら支払うか、というのは医療機関間の契約で決めることになっています。また別途病理標本作成には今までと同じように、病理標本作成料(1臓器の場合)860点が発生し、これを登録衛生検査所に委託する場合、標本作製のみで報告書不要とした場合、受託価格がさらに割り引かれるような交渉も可能と思われます。ただし、保険点数と受託価格にあまりにも乖離があると今後、標本作製料の保険点数の引き下げに発展する可能性もあり、もし標本作製料が引き下げられた場合不利益を特に被るのは、手術材料などで多数のブロック数となる標本作製をすることが多い自前で病理検査室を擁している病院ということになり、もしそうなれば影響は甚大です。少し話が逸れますが、標本作製料は、ブロック数ではなく、臓器数で規定されるため、内視鏡生検材料を扱う比率が高い施設の方が有利な仕組みになっています。悪性腫瘍の手術材料など多数のブロックを要する標本作製を行う施設にとっては、現行の標本作製料は不利な仕組みです。

発生する保険点数は増えるが、それに見合う付加価値が提供できるかが課題となる

委託する側と受託する側の取り分はさておき、一件あたりに発生する保険点数の総額が150点(病理判断料)から最大570点(病理診断料+病理診断管理加算1)に増えます。これは紛れもない事実です。本来の病理学的検査の病理判断料というのはかなり安く設定されているので、病理医の立場からすると、やっとこれで地位向上に近づいているとも言えますが、今までの病理学的検査で病理判断料を算定する場合と比較して、発生する保険点数が大きいことは、間違いなく医療費の増額であり、患者さんの自己負担増に直結します。これについて、この増額分に見合う付加価値が提供できるか、ニーズを満たせるか、つまりは健康保険料を納付している国民の理解を得られるか、自己負担をする患者さんの理解が得られるか、というところが課題になってきます。

 

次回は、この問題を患者さん、委託する臨床医、受託する病理医の立場からメリット、デメリットについて考えていきたいと思います。

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