病理医ぱそ太郎の病理と日常

温泉好きのふつーの若手病理医、ぱそ太郎が病理、医療などについて日々考えることを綴ります。有益な情報を発信できればと思います。ぱそ太郎Lab.

平成30年度 (2018年度) 病理関係 保険診療報酬改定 (中医協答申)

平成30年度(2018年度)病理関係 保険診療報酬改定の一報です。

2月7日、厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は平成30年度(2018年度)の診療報酬改定案を厚生労働大臣に答申しました。おおむねこの内容で、診療報酬は改定されることになります。

ぱそ太郎が重要と思うことを抜粋していますので、詳しくは原文を確認してください。

デジタル病理画像を用いた病理診断の評価及び保険医療機関間の連携による病理診断の要件の見直し

・デジタル病理画像(デジタルパソロジー)のみでの病理診断科算定が認められるようになりました。

以前は、デジタル病理画像(デジタルパソロジー)のみでの病理診断料算定は認められておらず、ガラス標本での確認が必須でした。これがバーチャルスライド等でのデジタル病理画像のみでも病理診断科が認められるようです。施設要件として、病理診断管理加算を算定している施設という縛りがあります。またデジタル画像について適切に管理できる必要もあります。

(ただ、普通は実際のところはガラス標本も後で確認すると思いますが・・・)

医療機関間の連携による病理診断において、デジタル病理画像の送受信によって行われた場合及び検体を送付して受取側の医療機関で標本が作製された場合も、病理診断料等を算定可能とする

・保険医療機関間連携の連携病理診断で、検体そのものの受託でも、連携病理診断の枠組みが使用可能となりました。

以前は、ガラススライドとなった標本の受託しか認められておらず、病理検査室を持たない施設が、他の施設に診断を依頼する場合、この枠組みを使うためには、衛生検査所等で標本作成の必要がありました。しかし、今後は、ホルマリン固定した検体そのものを受託先医療機関に委託し、受託先で標本作成から行っても保険医療機関間連携による連携病理診断の枠組みが使用可能となるようです。大学などでは以前からこのような形式の受託標本作成および診断は広く行われており、これは朗報と思われます。

 ICTを活用した勤務場所に関する規定の緩和

「画像診断及び病理診断を行う医師について、一定の要件の下にICTを活用した柔軟な働き方を可能とする。」という基本的な考え方の元、病理に関しては、病理診断料及び病理診断管理加算について、保険医療機関において週 24 時間以上勤務する医師が、ICTを活用して自宅等の当該保険医療機関以外の場所で読影した場合も、院内での読影に準じて算定できることとする。という内容になっています。

「【病理診断料、病理診断管理加算】[算定要件]区分番号N006病理診断料及び病理診断管理加算について、病理診断を専ら担当する常勤の医が、当該保険医療機関において週 24時間以上勤務実態がある場合、自宅等の当該保険医療機関以外の場所で、デジタル病理画像の観察及び送受信を行うにつき十分な装置・機器を用いた上で観察を行い、その結果を文書により当該患者の診療を担当する医師に報告した場合も算定できる。なお、デジタル病理画像に基づく病理診断に当たっては、関係学会による指針を参考とすること。また、当該医師の勤務状況を適切に把握していること。」

となっています。つまり、1日8時間勤務として、週3日以上保険医療機関で勤務している医師は、その他は自宅等でデジタル病理画像を用いて診断しても、診断料を算定できるということのようです。ただし、病理診断管理加算に登録されている医師は、管理加算の常勤の要件との整合性が問題になりますので、病理診断管理加算の要件を満たした勤務体系が求められることとなると思います。

・・・正直に言って放射線科の画像診断はともかく、病理でこの需要はほとんどないと思います。例えば、何らかの事情で週に1日2日自宅勤務をする必要がある医師としても、自宅でわざわざデジタルの標本を見るなら、標本を持ち帰って自宅に顕微鏡を置いて標本を見た方が、たくさん標本が見れるように思います。これが有効なのは一人病理医で自宅勤務日に術中迅速診断の対応が必要など、極めて特殊な事情の場合と思われます。

セルブロックの位置づけが組織扱いになります

・前回改定で細胞診のひとつとして認められた、セルブロックが、病理組織標本作成(セルブロック法によるもの) に移行します。ちなみに一部位につき860点です。

これは、セルブロックは免疫染色が前提の検査でありながら、細胞診の項目であったという不合理さがありましたので、この変更は現実に即しています。

迅速細胞診が術中だけでなく、検査中も認められます

・迅速細胞診は、今までは手術中の術中迅速細胞診のみ、保険点数がついていましたが、「手術中の場合(1手術につき) 450点」「検査中の場合(1検査につき) 450点」となりました。すでに病院によっては、検査中(EUS-FNAやEBUS-TBNA)で迅速細胞診・ROSE (Rapid on-site cytologic evaluation)を行っていた施設もあると思うのですが、これについても保険点数上の評価がされました。

悪性腫瘍手術材料の診断に関する評価(悪性腫瘍病理組織標本加算)

また、今回、もう一つ重要な加算が新設されました。悪性腫瘍病理組織標本加算です。

1については、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、悪性腫瘍に係る手術の検体から区分番号N000の1に掲げる病理組織標本(組織切片によるもの)作成又は区分番号N002に掲げる免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製により作成された組織標本に基づく診断を行った場合は、悪性腫瘍病理組織標本加算として、150点を所定点数に加算する。

悪性腫瘍の手術材料の診断は煩雑で、またブロック数も増えるため、上記の加算が設定されました。この施設基準については、現状明記されておらず、今後のアナウンスを待ちたいと思います。

 

今回の改定では、デジタル病理画像での診断料算定が認めらるようになったこと、検体そのものの受託でも保険医療機関間連携での病理診断が可能となったこと、ROSEに保険点数がついたこと、悪性腫瘍組織標本加算がポイントでしょうか。病理診断料を算定しているどこの施設でも関わるのは、悪性腫瘍組織標本加算と思います。これについての施設基準は今後の情報に注目したいと思います。

 

今回の改定について、 参考資料です。詳しくは、また正確にはこちらをご参照ください。

www.mhlw.go.jp

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000193708.pdf

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000193524.pdf

 

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