病理医ぱそ太郎の病理と日常

温泉好きのふつーの若手病理医、ぱそ太郎が病理、医療などについて日々考えることを綴ります。有益な情報を発信できればと思います。ぱそ太郎Lab.

病理医とは

 病理医って?

ぱそ太郎は、フツーの病理医です。大学病院ではない一般の病院で、病理診断科に属して、日々病理診断をしています。

病理で働く人や医師の中でも病理医の存在はメジャーではないと思います。

ましてや、医療関係以外の方の中では、病理医の存在はほとんど知られていないんでしょうか?

癌の診断をする仕事

ぱそ太郎の先輩の病理医は、昔言っていました。

合コンで、病理医のしごとについて説明するときは「癌の診断をする仕事」だよ

と言うとわかりやすいみたいだよっと。それは、ある意味真実に近いことではあるのですが、もちろんそれがすべてではありません。

 病理学とは?

病理学とは字のごとく、病気の理(ことわり)について、病理総論的な考え方をもとに明らかにする学問です。病理総論とは、医学教育を受けた方なら昔、基礎の病理学の講義で習ったと思いますが、腫瘍、炎症、感染症、変性、代謝障害、循環障害、先天異常などの病因の枠組みです。これらの病理総論の枠組みを用いて、諸臓器でおきていることや臓器横断的に生じている問題を理解することが、病理学の基本です。そして、病理総論的な枠組みを用いて病気の診断をするのが、病理診断です。

病理診断医の日常業務

病理診断医の日常業務の大部分を占めるのは、確かに前述の先輩が言うように癌の診断です。例えば、胃カメラを受けた時に、胃粘膜から組織片が採取され、その組織内に癌が存在するかを顕微鏡で観察して判断する。といったことです。日常の病理医が診断する症例の半分以上は、癌の有無の判断であるといっても過言ではないと思います。病理診断は病理総論の知識を用いて患者さんの諸問題を解決することだと思いますが、実際は病理総論の中でも腫瘍にかなりウェイトが占められているように思います。また、よく病理って研究?という誤解があるのですが、あくまで病理医の仕事は、病理学の知見をもとにした診療業務であり、研究ではありません。

癌の診断は病理医だけでするわけではない

当然ですが、癌の診断は病理医だけでするわけではありません。よく、病理医は提出された材料を顕微鏡で観察すればなんでもわかる、というように誤解されていることがありますが、全くそんなことはありません。臨床的にわからないものは病理でもわかりません。前記の胃カメラの例では、生検で提出される組織片の大きさはわずか数mmです。つまり、広い胃粘膜の中から(広げるとタオル1~2枚分ぐらいの面積?)から消化器内科の先生が、病変があると思って狙って採取してきた胃粘膜全体からしたらほんの僅かな範囲を観察して判断しているに過ぎないのです。ですので、内視鏡的に癌が疑われているということが、大前提なのです。そういう意味では、癌の診断は臨床の先生とともに行っているというのが正確なところです。

病理医は臨床の先生とは違った角度、違った方法で患者さんを診る仕事

臨床の先生は、それぞれの専門分野(内科や外科、皮膚科などなど)の各専門的な立ち位置の知識を用いて、直接患者さんを診察し、診断を行います。診断するための手法としてはレントゲンや、超音波、診察、問診、身体診察など様々です。一方病理医は、提出された患者さんの一部である検体を病理医が得意な方法 (主に組織を顕微鏡で観察すること)で病気について判断しています。組織診断は腫瘍の診断に得意である、また平面的ではありますが、空間の分解能に優れているという利点があります。病理医は、これらの自分の得意分野を用いて、患者さんん病態を主治医の先生と違う角度から違った方法で判断する仕事というのが病理医の仕事の本質だと思います。決して「診断を下す」という一方的なニュアンスのあるような仕事ではありません。

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