病理診断科診療所による連携病理診断のメリット・デメリットは?
登録衛生検査所で行われる病理学的検査・病理組織検査報告と比較して、病理診断科診療所との連携病理診断の最大のメリットとしては、委託元の臨床医の先生と診断を受託する病理医が顔の見える関係を築きやすくなる(固定の病理医が対応できる)ということだと思います。また保険医療機関同士であるので、病理医が診療情報の提供を受けることができる(ただし、これは依頼元が様式に沿って診療情報を記載する必要があるのですが、現状では依頼元にコストが発生しない)、他に別途契約すればカンファレンスのセッティングも可能である、などのメリットが考えられます。患者さんのメリットとすれば、間接的なことではありますが、臨床医と病理医が顔が見える関係であれば医療の質が向上すると思われるので、患者さんにも利益があるとも言えると思います。また直接的には、近隣の病理診断科診療所と連携している場合は、直接診療所を訪ねて、自分の標本についての意見が聞ける。ということはメリットになりうるかとは思います。かかりつけ病理医が持てる可能性があります。ただし、連携病理診断を行うにあたり、近隣の医療機関に限るという制約はありません。自分のかかりつけ医が遠くの病理診断科診療所と連携した場合、事実上、患者さんが病理診断科診療所に出向いて病理診断について説明を聞くということは現実的ではないでしょう。
デメリットとしては、委託側・受託側双方の労力が増えるということが一番大きいと思います。今までは、ホルマリンに検体を入れ、伝票さえ書けば、検体搬送~検査結果報告までがワンストップで行われたところが、検査所には標本作製のみを依頼し、検査所で作成された標本を一旦、病院で受取り、再び何らかの手段(追跡可能な配送システムなど)で病理診断科診療所に送付し、その診断書を受け取るという煩雑さ、また診断を依頼する際には様式に沿って診療情報を提供する必要があるという手間もあります(連携病理診断の際の診療情報提供には、保険点数が発生しない)。また、受託する病理診断科診療所としても、経費や設備投資を考えると最大570点(病理診断料+病理診断管理加算1)のうち委託元と合議で決めた一部の額で本当に賄うことができるのかという問題もあります。病理医側としては、検査所で行う病理学的検査の判断の助言であれば、検査所に出向けば、標本や顕微鏡、報告書やそれを入力するシステムなどが準備されていたものが、病理診断科診療所として連携病理診断を行うには、自前ですべてをセッティングする必要があります。患者さんのデメリットとしては、直接的な質の向上がわかりにくいにも関わらず自己負担が増えることでしょうか?患者さんにとってはそれ以外は、一般的なデメリットは明らかでないように思います。
次回は、病理診断科診療所に求められることについて考えつつ、まとめていきたいと思います。