病理医ぱそ太郎の病理と日常

温泉好きのふつーの若手病理医、ぱそ太郎が病理、医療などについて日々考えることを綴ります。有益な情報を発信できればと思います。ぱそ太郎Lab.

びまん性肺疾患・間質性肺炎など非腫瘍性肺疾患の病理アトラス・教科書ならこの1冊!病理医・呼吸器内科医・放射線科医必携

病理医や呼吸器内科医、放射線科医がびまん性肺疾患・間質性肺炎の病理のアトラス・教科書を買うなら、絶対にこれ1冊は!という書籍を紹介します。

呼吸器病理を専門としない病理医にとって、びまん性肺疾患・間質性肺炎・非腫瘍性肺疾患の診断は、とっつきにくいものと思います。また、呼吸器内科医・放射線科医にとっても、びまん性肺疾患・間質性肺炎・非腫瘍性肺疾患の病理は、病理医によって意見が違ったり、また自施設の病理医の診断と、研究会での呼吸器病理医の診断が違ったりして、なかなか掴みどころがないと思われている方が多いと思いのではないかと思います。

このように人によって意見が違うことがあり得る領域であるからこそ、権威ある著者による本を1冊持っておく必要があります。また、それでいて、クリアカットに平易に記載され、実際の診断・診療の役に立つ本、そんな本があれば良いなと・・・とみんなが思うことでしょう。今回紹介する「Diagnostic Atlas of Non-Neoplastic Lung Disease: A Practical Guide for Surgical Pathologists」はまさにそんな本です。

2016年、Katzenstein博士の今までの仕事の集大成と考えられる著書が出版されました。Katzenstein博士が引退される前に、リアルタイムでこの著書を購入できる今の時代を生きる我々は本当に幸運だと思います。

 (ぱそ太郎も発売された時にすぐに、amazonで購入しました↓)

Diagnostic Atlas of Non-neoplastic Lung Disease: A Practical Guide for Surgical Pathologists

Diagnostic Atlas of Non-neoplastic Lung Disease: A Practical Guide for Surgical Pathologists

 

このような後世にまで読み継がれるであろう書物が日本にいながら数クリックで購入できることは本当にすごいと思います 。しかもアマゾンプライム会員ならほとんど翌日には届きます。

このKatzenstein博士の新しいアトラスは、内容がわかりやすいだけでなく、鑑別疾患についてその鑑別に有用なポイントとなる組織所見が表で示されており、実際の診断に非常に役に立ちます。また、鮮明でポイントがわかりやすい組織像が弱拡大、強拡大ともに掲載されています。組織写真の質は他の病理の本と比較しても優れていると思います。また、多くの疾患で弱拡大と強拡大ともに掲載されています。特に弱拡大の組織写真は、呼吸器内科医や放射線科医がCTとの対比を考えながら組織像を理解する上で非常に参考になるのではないでしょうか。

この本は、病院で買ってももちろんいいとは思いますが、個人で購入して蔵書としても絶対に後悔しない1冊と思います。ぱそ太郎も非腫瘍性肺疾患の症例を担当する際には必ずこの本を参照しています。個人的には診断のピットホールのようなコラムのような囲み記事があるのですが、それも気に入っています。特発性間質性肺炎だけでなく、感染症や沈着症、肺血管病変などについても掲載があります。

病理医は趣味で呼吸器病理の本を何冊買ってもいいとは思いますが、呼吸器内科医や放射線科医が1冊はびまん性肺疾患の病理の本を持っておきたい!ということなら絶対にこの1冊を勧めます。

Diagnostic Atlas of Non-neoplastic Lung Disease: A Practical Guide for Surgical Pathologists

Diagnostic Atlas of Non-neoplastic Lung Disease: A Practical Guide for Surgical Pathologists

 
 これから、本当にはじめて間質性肺炎の病理を勉強しようとする人には

病理の後期研修を始めたばかりの方など、本当にこれから非腫瘍性肺疾患、特に間質性肺炎のことを勉強しようという方は、日本呼吸器病学会編の「特発性間質性肺炎診断と治療の手引き」をさっと読むと概観はわかります。最近改訂されたばかりです。特発性間質性肺炎については、2013 ATS/ERSの分類に準じて掲載されています。研修医の先生でCPCで間質性肺炎が当たった時なども少なくともさっとこれは読まれると良いと思います。

特発性間質性肺炎診断と治療の手引き

特発性間質性肺炎診断と治療の手引き

 
大幅にバージョンアップした「BAL法の手引き」

今回は非腫瘍性肺疾患の書籍紹介がテーマの記事ですので、せっかくなのでBALについての本も紹介します。BALについて何か1冊本を買うならこれしかないでしょう。

BALは非腫瘍性肺疾患(感染症やびまん性肺疾患)の有用な検査・診断ツールでありながら、施設によりあまり標準化がされていないと思われ、つい先日改訂された、「気管支肺胞洗浄(BAL)法の手引き」はBALに携わる人に必携と思います。

BALの実際について、約160施設のアンケートを元に日本の他の施設がどうしているのかということがわかる点が、特にこの本は興味深いです。

気管支肺胞洗浄(BAL)法の手引き

気管支肺胞洗浄(BAL)法の手引き

  • 作者: 日本呼吸器学会びまん性肺疾患学術部会厚生労働省難治性疾患政策研究事業びまん性肺疾患に関する調査研究班
  • 出版社/メーカー: 克誠堂出版
  • 発売日: 2017/12/01
  • メディア: 大型本
  • この商品を含むブログを見る
 

ぱそ太郎は病理医ですので、検査室に提出されたあとのことしかあまりわかりませんが、その立場からこの本を読んでなるほど、と思うことがたくさんありました。

施設によって、誰がどこで回収BALFを処理しているかは様々です。呼吸器内科の先生は、異動されたらぜひその施設ではだれがどこでどのように検体を処理しているか確認して、ぜひコミュニケーションをとって頂ければと思います(もちろん自分自身で検体処理や評価をしている先生もいるかと思いますが・・)。特に、細胞分画は数値で割合が出てきますので、一見確からしく感じてしまいますが、検体処理の仕方や計測法により出て来る数値に特性があるのでは?と思います。また、細胞分画は外注や院内であったり様々と思いますが、迅速に結果を知りたい場合は病理部門など院内で評価していることもあると思います。院内の病理部門で評価している場合、多くの施設では細胞検査士の資格を持つ臨床検査技師の方が標本を見ている場合が多いのでは、と思うのですが、病理部門の細胞検査士の多くは癌の有無の判定が主目的である細胞診が専門で、非腫瘍性肺疾患は専門でないことがほとんどです。BALFの細胞分画の評価を臨床検査技師に依頼する場合、その意義や目的について、ぜひ呼吸器内科の先生方は検体処理をしたり、実際の細胞を見る臨床検査技師とディスカッションして頂けばと思います(もちろんこれは病理医の仕事でもあるということは言うまでもありません)。

また、BALFの取り扱いは、検査室としては感染症の検査は細菌検査部門、細胞分画は病理検査部門か一般検査部門あるいは外注、CD4/CD8も外注など、検査室の中でも複数領域に渡り複雑です。BAL施行医と病理医・検査室・検査担当者の密なコミュニケーションが望まれます。

 

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