病理医ぱそ太郎の病理と日常

温泉好きのふつーの若手病理医、ぱそ太郎が病理、医療などについて日々考えることを綴ります。有益な情報を発信できればと思います。ぱそ太郎Lab.

2018年、細胞診専門医試験受験体験談とその対策(試験対策におすすめ書籍の紹介)

2018年、細胞診専門医試験受験体験談とその対策(試験対策におすすめ書籍の紹介)

はじめに

去る2018年12月1日(土)日本臨床細胞学会細胞診専門医試験が、東京のAP浜松町で開催されました。

ぱそ太郎は実は今年、日本臨床細胞学会細胞診専門医試験を受験していました。

→結果、無事合格していました。

受験するまで

細胞診専門医試験は、病理専門医試験以上に情報が無いと思いますので、受験の様子と対策について書いてみたいと思います。

ちなみに細胞診専門医は受験審査や受験料が高額でしかも消費税がかかります・・

(2018年度は受験資格審査21600円(税込)、受験料54000円(税込))来年10月より消費税が10%になりますので、8月の受験資格審査は消費税8%ですみますが、例年10月以降に受験資格通知があり、そこから受験料のお支払いですので、受験料については消費税10%となりますね・・これに宿泊や交通費も加えると受験自体にかなりコストがかかります。正直、受験にかかるコストがかなり高いので受けるなら一回で合格したいと思いました。

少し話がそれましたね・・

試験の実際について

細胞診専門医は近年はご存知の通り、医師は全員総合科を受験することとなっており、細胞像(カラープリント)、筆記(細胞診や病理の一般的知識を問うMCQ)、検鏡試験の3つに別れています。すべてマークシートを用いた多肢選択式です。

筆記(25問)と細胞像のカラープリント (25問)はまとめて一冊の冊子となっており、80分間で一つの区分として実施されます。筆記は最後の5問は、婦人科、婦人科以外、歯科関係、から問題を選ぶことになっており、医師はどれを選んでもいいことになっています。おそらく、病理医にとっては「婦人科以外」がときやすいのでこれを選ぶ人が多いのではないでしょうか。

検鏡試験(20標本40題)は、顕微鏡が固定で、受験生がぐるぐる回っていく形式です。例年10標本程度は婦人科となっています。今年は1標本5分で隣の席に移動することとなっていました。20標本40題というのはぱそ太郎は当日受験して初めて意味がわかったのですが、1枚の標本について、2問設問があるという意味です。1問目は、陰性、陽性を選び、2問目で推定組織型を選ぶという標本の場合と、1問目でこの症例で見られる所見はどれか?といった標本内の所見を問う設問があり、2問目で推定組織型を選ぶ、という標本の場合の二種類がありました。1問目で標本内の所見を選ぶ必要がある標本は数標本しかありませんでしたが、所見を選ばせる問題は、ちゃんと所見を探さないといけないので、制限時間内でそれをするのは少し緊張感のある作業でした。なお、検鏡試験が1標本2問仕立てになっているのは今年の新傾向のようでした。

ちなみに、合格基準は「筆記試験及び印刷物による細胞診断試験25点以上,検鏡試験30点以上で合計70点を超える者を合格とする」となっています。これは、細胞診専門医資格認定試験施行細則で規定されていますですので、不適切問題が無い限りはボーダーの調整はないと思われます。

検鏡試験は決して難しい問題はでませんが、問題数が少ないですので、クライテリアがずれたりして、婦人科で数問落としたりすると、ボーダーあたりまではいってしまう可能性はありえます。特に検鏡問題については、決して油断はできない試験だと思いました。

筆記は細胞診および病理の一般的な事項が問われるだけですので、過去問を数年やっておけば、病理専門医の人は十分と思います。ただ、プラスアルファで必要な知識として、臨床細胞学会の認定施設に対する細胞診精度管理ガイドラインは必ず出題されるので押さえておく必要があるでしょう(細胞検査士は常勤でなければならない、とか一日のスクリーニング枚数は90枚まで・・みたいなやつです)。細胞診特有の勉強としては婦人科のベセスダはもちろんですが、喀痰検診の判定と取扱も押さえておいた方が良いでしょう。カラープリントでの細胞像試験対策は以下でご紹介する書籍での対策で十分と思います。

 

以上が大体の試験の様子です。待機時間がありますが、待機時間中も勉強できます。喫食しても大丈夫です。

 

試験対策におすすめな書籍紹介

 「読む・解く・学ぶ細胞診Quiz50」の2冊(ベーシック篇・アドバイス篇)
読む・解く・学ぶ 細胞診Quiz50 ベーシック篇

読む・解く・学ぶ 細胞診Quiz50 ベーシック篇

  • 作者: 清水道生(埼玉医科大学国際医療センター病理診断科教授)
  • 出版社/メーカー: 診断と治療社
  • 発売日: 2014/04/25
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 
読む・解く・学ぶ 細胞診Quiz50 アドバンス篇

読む・解く・学ぶ 細胞診Quiz50 アドバンス篇

  • 作者: 清水道生(埼玉医科大学国際医療センター病理診断科教授)
  • 出版社/メーカー: 診断と治療社
  • 発売日: 2014/04/25
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

 病理専門医試験対策から細胞診専門医対策まで使えます。病理専門医試験および細胞診専門医試験で過去に出題されている疾患はだいたい網羅されていると思います。写真も基本的に良質ですので、繰り返し読むとミニマムに対策できます。会場でも持っている人が多かったです。ちなみに病理専門医試験対策としての細胞診の勉強は、この 「読む・解く・学ぶ細胞診Quiz50」ベーシック篇、アドバイス篇の2冊だけで十分と思います。

「細胞検査士細胞像試験問題集」
細胞検査士細胞像試験問題集

細胞検査士細胞像試験問題集

 

 演習には、これが一番おすすめです。1ページあたり2症例大きな写真がのっており、めくると解答・解説があります。細胞検査士試験の細胞像試験がカラープリントになる前の投影式だった時代の実際の試験問題の過去問症例集ですので、試験的な所見がある症例が選ばれており、また同じ疾患が症例を変えて繰り返し掲載されていますので、演習という点でも有用です。一見分厚く見えますが、紙がよい紙なので本が分厚いだけで、1Pあたり2症例なので割とすぐにできます。会場でも開いている人をちらほら見かけました。

ここに掲載されている問題のレベルと細胞診専門医試験で出題されるレベルは概ね同程度と感じました。これを何周かやっておくと確実に自信がつきます。細胞検査士試験の過去問だから細胞診専門医試験対策に使えないということはありません。むしろこの問題集と同じような問題が出題されますので、必携です。しかも、診断名や用語はちゃんと、出版時点の最新に合わせてありますので、もちろん婦人科はベセスダ対応しています。

 

正直、 「読む・解く・学ぶ細胞診Quiz50」と 「細胞検査士細胞試験問題集」、「過去問」の試験対策的な勉強で普段から細胞診を見ている病理専門医は十分合格できると思います。ぜんぜん細胞診を見ていないという人や部分的に見たことがない領域があるという人は、見たこと無い疾患の代表的な細胞診標本は1度見ておいた方がよいとは思います。特に、婦人科の上皮内病変は自分の中でのクライテリアがずれていないかを直前に標準的と思われる標本で再確認しておいた方がよいでしょう。

 

その他の細胞診の本について

「細胞診を学ぶ人のために」
細胞診を学ぶ人のために

細胞診を学ぶ人のために

 

 「細胞診を学ぶ人のために」は、有名かつ定番本で、ぱそ太郎も持っており読みましたが、おそらく病理医が細胞診の勉強をするという視点では目的に合っていない本です。

これは細胞検査士を目指す臨床検査技師の人が体系的に病理学の一般的な知識(総論・各論)も含めて学ぶ入門書としては非常にいい本だと思います。ただ、病理の一般的なことはだいたい理解している少なくとも病理専門医レベルの病理医からすると、細胞診のことだけを参照したいわけで、病理医が細胞診のことを勉強するというニーズには合っていない本だと思います。細胞所見の解説が詳しいわけでもありませんし、写真も小さいです。

 「細胞診セルフアセスメント」
細胞診セルフアセスメント

細胞診セルフアセスメント

 

前記の「細胞診を学ぶ人のために」の姉妹本として、セルフアセスメントを目的として企画された問題集です。会場で開いている人を見かけましたが、細胞診専門医試験対策にこれをするなら、写真の大きさや質の点で、上でご紹介している「細胞検査士細胞像試験問題集」の方が断然おすすめです。ただ、細胞検査士試験の一次試験の学科試験対策の問題が本書の後半に載っていますので、細胞検査士試験を受ける人にはその点は有用な本だと思います。

 

 その他、病理医、細胞検査士ともにおすすめの細胞診の本

「細胞診をワンポイント講座ー知っていれば役立つ細胞所見」
細胞診ワンポイント講座―知っていれば役立つ細胞所見

細胞診ワンポイント講座―知っていれば役立つ細胞所見

 

 試験対策には不要な本ですが、日常で細胞診の形態用語の成り立ちなどを調べるのに病理医にとっても、非常に良い本だと思います。読み物として面白いですが、なかなか普段の検鏡でここまで所見を取れませんね・・・、持っておくと細胞検査士の人とのディスカッションには有用と思います。

 

以上、2018年細胞診専門医受験体験談とその対策(試験対策におすすめ書籍の紹介)でした。これから受験する先生方の参考になれば幸いです。

細胞診専門医試験は、病理専門医は普通に勉強すれば合格できると思いますが、全く勉強せずに受験すれば、ボーダーが7割とやや高いかつ、ブロックごとの足切りも設定されていますので、不合格になってしまう可能性はあります。ただ、細胞診は試験に出せる疾患や、試験に出せる細胞像のパターンが決まっているため、同じような細胞所見を呈した同じような疾患しか試験には出し得ないと思います。それは試験対策がより有効ともも言えます。その対策には上記の試験対策におすすめな三冊(「読む・解く・学ぶ細胞診Quiz50」ベーシック篇、アドバイス篇、「細胞検査士細胞像試験問題集」)だけで十分と思います。

なお、今回の書籍紹介は、他にも優れた細胞診の本があるのは承知の上、純粋に細胞診専門医試験対策という点でピックアップさせていただきました。また、細胞診の本に対するニーズは細胞検査士の人や、それを目指す人と病理医、細胞診専門医を目指す病理医では異なっていますので、そのあたりを意識して本を選ぶ必要があります。細胞検査士の方々向けの細胞診の本で病理医にも非常に有用な本ももちろんありますし、ニーズに合っていない本もあります。それを今回の記事で感じて頂ければ幸いです。