胃癌取扱い規約第15版 変更点
昨年10月に「胃癌取扱い規約第15版」が出版され、既に定着してきた施設も多いのではないでしょうか。
その変更点について、病理医の視点で重要と思う点を解説したいと思います。
病理診断の記載法が変更になっています。
・記載例(内視鏡的切除検体の場合)
Stomach, ESD: L, Ant, Type 0-Ⅱc, 20x30mm, tub1, pT1b2 (SM2: 1mm), INFb, pUL0, Ly0, V0, pHM0, pVM0
のような記載となります (これは書き方の一例です)。
今までは・・・
Stomach, ESD: L, Ant, Type 0-Ⅱc, 20x30mm, tub1, pT1b2 (SM2: 1mm), int, INFb, Ul (-), ly (-), v (-), HM0, VM0
のように書いていました。今回の変更では、記載法という点では、間質量の記載 (med, int, sci)がなくなり、脈管侵襲の記載法が大文字表記かつ0, 1になっています。また、以前はHMやVMにpの記載が不要でしたが、記載することになりました 。
・記載例 (手術検体の場合)
Stomach, distal gastrectomy: L, Ant, Type 2, 35x30mm, tub1, pT2 (MP), INFb, Ly1a, V1b, pPM0, pDM0, pN0
のような記載となります (これは書き方の一例です)。
今までは・・・
Stomach, distal gastrectomy: L, Ant, Type 2, 35x30mm, tub1, pT2 (MP), int, INFb, ly1, v2, pPM0, pDM0, pN0
と記載していました。手術検体の場合は、以前はly0, ly1, ly2, ly3, v0, v1, v2, v3としていたものが、Ly0,Ly1a,Ly1b,Ly1c,V0,V1a,V1b,V1cという記載法となります。
大文字表記はTNM準拠ですが、V1やLy1を1a~1bに細分類するのは日本のローカルルールです。
粘膜筋板断裂時の粘膜下層浸潤距離の測定法が明記されました
粘膜筋板断裂時は、腫瘍表層から最深部までの距離を計測することとなりました。
これは非常に重要な変更点です。以前からこのように測定していた人もいると思いますが、おそらく施設や病理医により統一されていなかったと思います。
大腸癌取扱い規約に準じた変更となっています。ただ、大腸癌は粘膜下層浸潤距離1mm以上がSM2、胃癌では0.5mm以上がSM2ですので注意が必要です。
*後日、組織像を掲載し、解説します。
検体のホルマリン固定時間が明記されました。
以前から「胃癌・乳癌 HER2病理診断ガイドライン」に記載されていましたが
胃癌取扱い規約でも望ましいホルマリン固定時間が明記されました。
10%中性緩衝ホルマリンでの固定時間が6時間以上72時間以内が推奨されています。
施設にもよると思いますが、基本的には当日採取の生検検体は、朝一番~午前の早い時間の採取でなければ、当日中の自動固定包埋装置へ入れることができない感じです。
(当日採取検体は、例えば午後採取でも、2時間程度の固定で、当日中に自動固定包埋装置に入れていた施設では、結果報告日数が1日程度遅くなる可能性があります。)
このあたりは、症例によって判断、主治医との相談も必要になるでしょう。
胃癌治療ガイドライン医師用第5版も発売されました。
既に周知されていますが、今回の改定では3次治療以降でのニボルマブについての記載が入りました。ただ、これはPD-L1免疫染色などのコンパニオン診断は不要ですので、治療適応に関して病理医の関わりは少ないのが現状です。
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