外科医・消化器内科医・病理医必携の「胃癌取扱い規約第15版」が発売されました。
胃癌取り扱い規約が改訂され15版が発売されました。良し悪しはともかく、胃癌診療に関わる医師にとっては、必携でしょう。
ぱそ太郎も早速手に入れましたが、何点か重要なポイントもあります。
特に、粘膜下層への浸潤距離の測定法が明記されたことと、ホルマリン固定時間が明記されたことが重要と思います。
・検査室での対応として重要な点は、生検検体および手術検体のホルマリン固定時間が、明記されたことです (6時間以上72時間以内)。
これはHER2免疫染色に特に関係します。以前からホルマリン固定不良あるいは過固定の場合の染色性低下が指摘されていました。
今回の固定についての記載内容は、先に出版されている「胃癌・乳癌HER2病理診断ガイドライン」に合わせた形になっています。以前から、生検検体は病院によっては、ホルマリン固定時間が短い可能性があり問題となっていましたが、臨床側の一日でも早く結果をという要望もあり、当日採取の検体を6時間に満たない程度のホルマリン固定時間で、脱水・浸透の工程へ進めていたケースは多く存在していたと思われ、(もちろん実際のケースによっては許容しえると思われる)、固定時間の原則が規約にも明記されたことは今後の検体取扱における一つの指針になり得るでしょう。規約にも記載されたことは、病理側としては、臨床側に十分な固定時間の確保を求める根拠の一つになります。
・また、病理診断の上でも、何点か評価法・記載上の変更があります。
もっとも重要な点は、SM浸潤の浸潤距離の計測法が明記されたことと思います。これな特に内視鏡的切除検体で重要です。以前から、大腸がんでは、粘膜筋板の走行が推定できる場合と、できない場合で浸潤距離の計測法が規約に記載されていましたが、胃癌については、粘膜筋板の走行が追えない場合の評価法が明記されていませんでした。実際は、施設あるいは評価者によって様々だったと思います。今回の改訂では、胃癌でも粘膜筋板が完全に断裂している場合は、表層より浸潤距離を計測することとなっており、大腸に近い形になっています。何が正しいかはともかく、粘膜筋板断裂時のSM浸潤距離の評価者間不一致は、確実に減少するでしょう。
また、他に、評価者によって基準が様々であった潰瘍性病変について、写真つきで解説されています。その他、そこまで大勢に影響しない変更としては、以前からなんとなくあり、多くの人が不要と感じていた間質量の記載(med, int, sci)が廃止となり浸潤形式(INFa, b, c)のみの記載で良くなったこと、あとは、脈管侵襲の表記法の記載法が若干変更になっているので注意が必要です。
今回の規約改訂は重要と思います。
特にESD検体の評価で重要な、粘膜下層浸潤距離(SM1とSM2)の評価に関わる、粘膜筋板断裂時のSM浸潤距離計測法について、今回の改訂では特に重要な記載があります。今回の胃癌取り扱い規約改訂は、胃癌のESDに関わる施設の消化器内科医、病理医、外科医にとっては特に重要と思います。
胃癌取扱い規約第15版の変更点や記載例について記事を追加しました。
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